特別企画あり4

『有吉文庫』メモリアリ


その17 雪だよ『月刊若人』大集合(贋作五話) 2006/01/28


第1話 『奇跡の見舞い客』


男は突然、病いに倒れた。長い闘病生活に飽き飽きしていた。
『入院してもう3ヶ月、いつまで続くのだろう』

その時、奇跡の見舞い品をもった見舞い客が現れた。
漫画先生と呼ばれる彼は、漫画全集を携えていた。
『これを読み終えたら、また次のと交換しますよ』

男はこの日から、順調に回復しリハビリに励んだ。漫画本が面白かったから。

漫画先生のチョイスに、はずれはないぜ。



第2話 『テングが覗いたスーパー銭湯』


今回先輩が薦めるスーパー銭湯に行ってきた。
従来の銭湯より広く、健康ランドより安価、駐車場完備。
露天風呂、リラックスバス、エステバス、
ローリングバス、遠赤外線サウナ、水風呂。

まことに快適。充実のプログラム。
しかし、いかんともしがたい難点を発見。
すなわち、ここには番台が無い!
「低めの良き番台」なくして銭湯と言えるだろうか。

この銭湯でも男性は男湯に入る方式。銭湯代500円。
何も見えねえよ。失意のうちに男湯に乳頭、いや入湯。
湯けむりの向こうでオッパイはあったまっているのだな。
露天風呂で憤然と過ごし風邪をひく。

失敗。



第3話 『続続続暴力団事務所潜入』


冬将軍が我が物顔で大暴れする1月某日、
東京の危険地帯を訪れた。雪で凍って滑るので非常に危険なのだ。
某有名企業のオフィスに強制捜査が入ったとのニュースが流れた。

実はかねてから、長い付き合いの木村さんの案内で、
何かと噂のそのオフィスに潜入しようと計画していたのだった。
が、地検に先を越される。
とるものもとりあえず駆けつけて家宅捜索を見守る俺と木村さん。
ただの野次馬だ。

仕方なく潜入先を広域暴力団の事務所に変更。
見るからに強度の弱そうなドアを蹴破ると、
すぐに室内が全部見渡せるワンルームだ。

『ドアの正面がベランダというのはマズイ』
いきなり木村さんは冷静に指摘する。
『運気が逃げる』
的確な判断だ。鋭い。
『キッチンには仕切りが必要だ』
木村さんはきっぱりと断言した。

折しも、数人の構成員が熱帯魚の水槽を撤去し、
代わりに暖炉を設置している最中だった。

ようやく事態が飲み込めてきた俺は訊ねた。
「ここは水よりも火が運気を呼び込むからか?」

木村さんはゆっくり首を横に振り、重々しく答えた。
『いや、寒いから。暖炉はいいぞ』

今年の寒さははんぱじゃないもんね。



第4話 『ノック』


『そんな馬鹿な!』
「落ち着けよ」
『おでんは冬がいちばんよ!』
「コンビニに一年中あるじゃないか」
『わたしは冬しか認めない!』
「夏のおでんは冷たいのもあるよ」
『あんなもん邪道よ、おでん界の風上にもおけない』
「わざわざ温めなくていいよ」
『だめ!寒い時にこそヤケドしそうなおでん!』
「もう何度もヤケドしたよ」
『いくわよ!はい、タマゴ!』
「ギャー!!」
『次、ダイコン!』
「やめろ!」
『よけるな、軟弱もの!』
「カラシをつけて目を狙わないでくれ」
『がんも!』
「汁がいっぱいしみたのはカンベンしてくれ〜」

今日の献立は『おでん投げ』



第5話 『ご近所の美味い店』


行きつけのソバ屋がつぶれた
立ち食いだけにタチが悪い







その16 うめずのふゆ(贋作三話) 2005/12/08
     〜またまた眠れない夜 恐怖がはじまる〜


第1話 消えた聖夜


外は吹雪いている 凍てつく夜 静まりかえっている

その子は生まれてこのかた
ただの一度としてクリスマスを華やかに祝った記憶がない
呪われた一族の悲しい宿命

ひとかけらのケーキでいい 一輪の花でいい
記念日を彩るものがほしい
だが この家には食べ物ひとつ残されていなかった

涙ぐむ子の背後に近づく大きな黒い影があった


『まだ起きていたのか 早く寝なさい』

熊の父さんは子熊ちゃんに向かって言った

十二月 熊一族は冬眠中



第2話 着信ナシ


不可解な出来事が続いた
携帯電話に着信がないのだ
誰も私のことを思い出そうとしない

娘は戦慄を覚えた
忘れられた存在
誰か 誰でもいい 私を思い出して!

彼女の願いも虚しく今日も着信が無い


『あ あたしのケータイ壊れてる』

落とさないように気をつけてね



第3話 偽装アリ


いつからか幽霊屋敷と呼ばれる建物があった
ときたま命知らずの冒険家が訪れるだけだ
近づくと何故か見えない力によって足の動きが止められてしまう
これは邪悪な魔物が取り憑いているに違いない

古書店主にして憑き物落としとして知る人ぞ知る男が現れた

彼はその建物を一目見て断言した


『違法建築だね』

もっと早く指摘してほしいものです





その15 夢摩呂の秋(贋作三話) 2005/10/25


第1話 『原辰徳と不死鳥の巨人軍』


次期監督は抱負を語った
『ジャイアンツに対する愛情、情熱、責任の重さを背負って、最高のチームを作りたい。優勝に向かって全身全霊をかけて戦い抜きます』

魔法使いが現れた
「では、あなたの2年前の‘わだかまり’を消してあげよう」

『そういうの全くありませんから』

「ほんと?」

『この2年でボクの視野は広がりました』

「広がった?」

『はい、広がりました。ほら、長崎も熱海も東京ドームの夜景も、みんなキレイですよ』

がんばれ原ジャイアンツ!



第2話 『ロッテ、ちゃんと阪神と初めての日本シリーズ』


かわいいロッタちゃんはご機嫌ななめ、セーターがチクチクして仕方ありません
なんとハサミでジョキジョキ切り始めました、さあたいへん

だが、バレンタイン監督は決して怒らなかった
『選手の適性を生かすことが大切だ、自主性を重んじる』

プレーオフの勢いで第1戦を迎えるのであった



第3話『タイムリーねえだ3』


コンピューターと人間との壮絶な戦いは続く
ジョンは不安だった
人類の未来は本当に塗りかえられたのだろうか

ターミネーターは衝撃的な真実を告げた
運命の時は引きのばされただけで、必ず訪れると


阪神の岡田監督は言った
『タイムリーが出ない…』

日本シリーズを引きのばすべく「4」では打線のタイムリーを!


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