電話を待って

 お風呂上りでぽかぽかした気分で、シャーリーは目の前の携帯電話を眺めていた。
 うーん、電話、しちゃおうかなあ。恋人同士になったんだもん、何の用事もないけど、かけたっていいよね。
 つ、と手を伸ばして、でも、と思う。
 ルルからかけてきてくれないかなあ。
 ほわん、と、シャーリーの顔が緩む。
『シャーリーの声が聞きたくて』
 そんなルルーシュの声が耳元で聞こえたら、きっととっても嬉しい。
「こら、鳴れー。ルルから電話こいー」
 つんつんと、携帯電話を指先で突っつくシャーリー。
 でも、ルルから電話なんて、それも用事もナシになんて、ありえないかな。
 シャーリーは苦笑いする。
 会えば会ったで話すことたくさんあるのにね。
 ルルは電話かけるの嫌いなのかな。
 わたしはかけるよりかかってくる方が好きかな。
 自分からかけたら、ルルの都合を気にしちゃう。だからルルからかけてきてくれたら、いっぱい話せると思うから。
 家に帰って、こうして、こんな時間でも二人でいることを感じたいから。
 わたしたちが繋がっているんだって伝えたいから。
 だから、話したい。
 うーん、やっぱり電話、かけようかなあ。
 ちら、と見た時計の時刻は結構ぎりぎり。
 あんまり遅いと、迷惑だよね。
 はふ。と小さくため息。
「……うー。よし、後10分経って電話かかってこなかったら、電話かける。それで、おやすみなさいだけでもいおうっと」
 シャーリーはそう決めると、じーっと携帯電話を睨みつける。
「鳴らないなあ……んっ」
 なんだか喉が渇いている。このまま電話でたら、ルルに笑われちゃうかも。
 シャーリーはすたっと立って、冷蔵庫に向けて歩き出して、ぴたっと止まる。少し戻って携帯電話を手に持って、もう一度冷蔵庫へ。
 一秒だって長く話したいんだよ。
 誰もいないのになんだか言い訳がましく口を尖らせる。
 冷蔵庫から取り出したレモネードをコップに注いで、んくんくっと飲み干して、シャーリーはまたベッドに戻る。
 放恣に身体を投げ出して、枕元に置いた携帯電話を眺める。
「あと、5分」
 だけど。
「もう我慢できない。かけちゃお」
『あのね、シャーリーだけど。ルルはもうすぐ寝ちゃう?』って話しかけて。少しはルルと話が出来るかなあ……。
 そして、携帯電話にシャーリーの手が伸びた時、LEDが赤と緑にちかちか点滅して、軽快な曲が鳴り出した。
 途端に芯が通ったように、シャーリーがベッドに起き上がる。
「も、もしもし?」
『もしもし、夜分遅くすまない。シャーリー時間はあるか?』
「ルル!」
 うん、あるよあるよ、とシャーリーは満面の笑みを浮かべていった。


あとがき
すいません、オチも何にもありません。いや、でも、可愛いシャーリーが書きたかったんです。それだけで、本当に時間無い中思いついて書いてしまいました。
私らしくない作風でしたね。でも、自分はきっちりオチをつける作品ばかり書いているので、逆にこういうのも好きなんです。書くのは苦手ですけど。
RELIVE書けよって突っ込みはもっともです。すいません。まあ、あっちも書いてはいるんですけどね。時間が欲しいです。
2008/11/18 栗村弘

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